今回ご紹介するのは島根県安来市古川町にある さぎの湯温泉です。
「さぎの湯」の「さぎ」とは鳥の白鷺のことを指します。何でも神亀時代——西暦だと 8 世紀くらい——にこの地に白鷺が舞い降り、湧き出していた温泉で足の傷を癒やしたという伝説があって、それにちなんだ名前なのだそう。山陰地方の温泉地は概して 300 年や 500 年の歴史があっても新参者、 1,000 年を越えた辺りでようやく古い伝統を誇れるようになりますが、ここもその例に漏れません(やれやれ)。
この辺りは安来平野の南端に当たり、北東に向かって延々と田園が広がっています。そして、今でも白鷺が優雅に宙を舞い、田んぼで虫やどじょうをつついている姿を見ることができます。
夢ランド(通販番組ではない)
さぎの湯温泉は安来市の中心市街地から南西方向に伸びる県道 45 号線沿いにあります。県道沿いに流れる飯梨川の北西岸沿いに小さな温泉街があり、温泉宿が何軒か営業しています。それぞれの宿で宿泊はもちろん、日帰り入浴も可能なのですが、ここでは川を太平寺橋で渡った反対側、東南岸にある健康増進施設、夢ランドしらさぎ を紹介したいと思います。
この施設は一般財団法人・夢ランドしらさぎ振興事業団が運営していて、大浴場や貸し切り形式の家族風呂、介助風呂のほか、ウォータースライダーを備えた温水プールがあります(温水プールゾーンでは水着の着用が必要です)。また、食事のできるレストランや宴会場、貸し会議室、お土産品の売店があり、宿泊も可能です。

利用料金
大浴場を日帰り入浴で利用する場合の料金は大人ひとり 520 円です(2025 年 1 月現在)。ひと月単位で二割引になる月間会員券があるほか、温水プールなどを利用すればその分、費用がかかります(水着や浮き輪の貸し出しもあります)。
浴槽
大浴場はサウナ・水風呂付きの内湯のほか、露天風呂があります。どちらも湯量豊富で、オーバーフロー式になっています。安来の中心市街地や広瀬町の市街地から車で二十分ほどで来られる距離感なので地元民のお客さんが多く——要するに田舎のジジババの社交場です(苦笑) 客層を理解の上、ご訪問ください。

他施設
ちなみに、 さぎの湯温泉は田舎のチンケな温泉地(失礼)ですが、その規模に似合わぬ大きな観光施設が二つあります。温泉で温まった後に、これらの施設を訪れるのもいいかも知れません。
その一つは足立美術館です。
足立美術館は世界的な日本庭園専門のメディア『数寄屋リビングマガジン Sukiya Living Magazine : The Journal of Japanese Gardening 』が日本国内にある 1,000 ヶ所以上の日本庭園を対象にして実施した「日本庭園ランキング」に於いて、京都府の桂離宮を始めとする有名どころを排して 22 年連続(2025 年 1 月時点)でナンバーワンを獲得した日本庭園を有する美術館です。また、近代日本画の巨匠・横山大観や陶芸家・北大路魯山人1のコレクションも有名です。

ここの日本庭園がどのぐらいガチか、例を一つ示しましょう。

この画像は美術館の横を通る県道 45号線の景色です。道路の右手奥、白い建物が美術館の新館で、その手前に広がる樹が一杯生えたエリアが日本庭園になります。そして、道路の左側、山の部分をよく見ると小さな滝があるのが分かります。この滝は人工のもので、わざわざ山の上まで水を引いて無理矢理滝を作っています。なぜにこんなところに人工滝が存在するのか。それはこの画像の右手奥にある美術館の旧館から庭園を眺めたとき、遠く木々の梢の向こうに見えることになる山に滝を配するため——要するに、借景にするためだけに道路の反対側、庭園の敷地外となる山の上に人工の滝を拵えているのです。この庭園の設計者、正直頭おかしい(ほめ言葉)
そしてもう一つの観光施設は安来節演芸館です。どじょうすくい踊りで有名な安来節を主軸とした伝統芸能のための演芸場になります。
安来節と言えば全国的に有名な芸能です。何しろ百合小説の嚆矢とされる「マリみて」こと「マリア様がみてる」の一編「いとしき歳月」にて主人公である“紅薔薇のつぼみ”福沢祐巳が、お姉さまである“紅薔薇さま”小笠原祥子様がリリアン女学園をご卒業される際に催された「三年生を送る会」にて踊ったとされる演芸なのですから! (早口)2
明治時代に初代渡部お糸が日本中に広めて隆盛した正調安来節の保存と振興のために設立された安来節保存会の事務局はこの安来節演芸館の施設内に設けられています。
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