今回ご紹介するのは島根県雲南市木次町にある出雲湯村温泉湯乃上館です。
島根県南東部に位置する雲南市は平成 16 年に大東町・加茂町・木次町・三刀屋町・吉田村・掛合町の六町村が合併して成立した比較的新しい市です。県庁所在地である松江市と県の東南縁にあたる奥出雲町、飯南町の間にあり、中国山地の山あいに散在する山村がいくつも寄せ集まって市制を取っています。
また、この市は島根県東部を代表する河川である斐伊川の源流域に当たり、お隣、奥出雲町内を発した川の流れは雲南市内を横切って、北西側の出雲市で宍道湖へ流れ込んでいます。雲南市内を南北に縦断する幹線国道 54 号線から枝分かれする国道 314 号線が斐伊川沿いに奥出雲町まで続いています。
そして、この斐伊川 / 国道 314 号線の途中にあるのが今回ご紹介する出雲湯村温泉です。
奥出雲の秘湯
雲南市の市庁舎や松江自動車道の三刀屋木次 IC がある旧・木次町の中心市街地から国道 314 号線を南南東に進むと、国道沿いの斐伊川を上流方向へ向かうことになります。山あいの谷底をぐねぐねと縫う川の流れはやがて東方向に向きを変え、尾原ダムに堰き止められた川がダム湖である“さくらおろち湖”を形成することになるのですが、出雲湯村温泉は斐伊川や国道が南南東から東へ向きを変えるカーブの辺りに位置します。木次町中心市街地からの距離はおよそ 10km ほどです。地名はまんま木次町大字湯村。すぐ近くに温泉神社があったりもします。実はおよそ 1,300 年前に編纂されたとされる出雲国風土記に“漆仁の湯”として記載されていた、由緒正しい古湯なのです。
山あいにある小さな湯治場ですが、地内には温泉施設が二か所あります。一つは国道沿いにある国民宿舎・清嵐荘です。 2019 年にできた比較的新しい施設で、国道沿いにあるのはもちろん、市営バスのバス停があるので、交通アクセスがよいところです。(近日中に、この清嵐荘も記事にする予定です)
もう一つの温泉施設が今回俎上に上げる湯乃上館です。こちらは創設が江戸時代初期と伝えられ、現在利用されている建物も明治時代に建てられた築 150 年モノという由緒正しいボロy……古民家です。
場所としては国道から通りを一本入り、斐伊川を橋で渡った対岸になります。橋を渡った直後にギュインと 180 度ターンをぶちかまして路地の奥に進みます。自動車でやってくると「おいおい、大丈夫なのかよ?」と心配になる狭い道ですが、心配無用です。突き当たりの左右がそれぞれ駐車場になっています。駐車場に車を駐め、ちょっとだけ戻ることになります。

一日二組限定の鄙びた古民家宿ですが、道路を隔てた別棟に日帰り温泉施設“元湯 漆仁の湯”があります。

いかにもな古い建物ですが、中に入ると意外にも利用料金の支払いには券売機を利用します。

券売機で購入したチケットを管理人のバb……お姉さんに手渡して、奥(上の写真だと左手)に進み、靴を靴箱に入れると、その先に男女別の浴場があります。
利用料金
温泉入浴の利用料金は大人一人 600 円です。 10 回分 5,000 円の回数券もあるようです。
また、男女別の浴場とは別に、露天風呂付きの貸し切り家族風呂もありますが、そちらは 50 分 1,100 円の追加料金が必要のこと。また、貸し切り風呂は一か所しかないので、既に利用者がいた場合は順番待ちになります。

さらに、手軽な足湯もありますが、残念ながら無料で利用とはいかず、足湯利用だけでも大人 200 円、子供 100 円の利用料がかかります。
浴場
施錠可能なロッカーどころか、脱衣カゴが並んだ棚があるだけ(実際は外の廊下に貴重品を預けるロッカーがあります)という脱衣室で服を脱いで浴室に進むわけですが、そこは数百年続く古湯、近代的な設備を期待してはいけません。洗い場はシャワーや鏡どころか蛇口もなく、壁からにょっきり生えたパイプから箱桶の中にジャーッと源泉がかけ流されているだけです。さすがにお風呂椅子と洗面桶は備えられていますから、お風呂椅子に座って洗面桶で箱桶からお湯を汲み、自分の身体へとかけます。
当然、ボディソープなどというハイソな代物は備えられておらず、お情けで固形石けんが置かれているだけです。シャンプーやコンディショナー、ボディソープが使いたい場合は自前で持参する必要があります。壁に鏡すらありませんから、髭を剃る場合は手探りで勘に頼る他ありません(もしくは手鏡も持参)。
浴槽は内湯と外湯の露天に各一か所ずつ。当然、加温循環なしの源泉掛け流しオーバーフロー式です(実際には内湯からオーバーフローしたお湯が外湯へ誘導されています) 外の露天風呂はすぐそこが斐伊川の河原になるので、眺めはとてもいいです。露天風呂からオーバーフローしたお湯が簡易浄化槽を通って川へとジャバジャバ流されているところまで丸見えです。いやあ、源泉完全掛け流しっていいですねえ(すっとぼけ) 湯温はヒリヒリあつい感じではなく、ちょうどいい塩梅。湯温 43 ℃のアルカリ単純泉とのことなので、とても優しいお湯です。
他施設
お風呂上がりの休憩用に半露天の桟敷席が設けられています。

ちょうど斐伊川の河原に面しているので、夏辺りの涼感はハンパなさそう。

お風呂上がりの喉の渇きを潤したいときは屋内に牛乳の自販機とビールの収まった冷蔵ケース(恐らく現金を受付のばあさんに払うタイプ)が、ソーダやジュースなど缶飲料用の自販機が出入り口横の外に設置されているので、そこで購入して、桟敷席でゆっくり休憩するのが吉かと。わたしは由緒正しく、コーヒー牛乳をいただきました(笑)
昭和以前のノスタルジー溢れる、山あいの鄙びた温泉を求めている方にはちょうどいいところではないかと思います。
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