三瓶温泉 志学薬師 鶴の湯

温泉
三瓶温泉 志学薬師 鶴の湯

今回ご紹介するのは島根県大田おおだ三瓶さんべ志学しがくにある”三瓶温泉 志学薬師 鶴の湯“です。

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二番目ではダメなんですか?

 島根県のほぼ中央、律令国時代で言えば石見国いわみのくに東部に当たる大田市で一番有名な観光地と言えばやはり世界遺産になっている大森町の石見銀山でしょう。現在は廃坑になって古い遺構が残るだけですが、ここは戦国時代から江戸時代にかけて日本の経済を支えた国内最大規模の銀鉱山で、一時は世界全体での銀産出量に占める割合が三分の一に達していたのですから、産業遺構としての価値はまさに世界規模です。

 では、二番目は? 大田市に於いて二番目に価値がある観光資源は何でしょうか?

  諸説あるとは思いますが、多くの人が挙げるのは三瓶山だと思われます。大山隠岐国立公園の一部とされるこの山は自然が豊かで風光明媚なだけでなく、およそ 4,000年前の縄文時代に発生した大規模な噴火によって誕生した火山性の埋没林が山麓に散在し、地質学的にも貴重な場所とされています。島根県立三瓶自然館サヒメルさんべ縄文の森ミュージアムといった施設で山域の珍しい動植物や火山灰に埋もれた縄文時代の森のことを知ることができます。また 2003 年に実施された活火山の定義見直しによって活火山に認定された三瓶山の南麓には温泉が湧き、それを利用した温泉宿や共同浴場が何軒か営業しています。共同浴場は二軒あり、それぞれ“鶴の湯”、“亀の湯”とと呼ばれているようです。今回、わたしは“鶴の湯”の方に入浴してきました。

施設の様子

 三瓶山の山麓をぐるりと周回する三瓶山高原道路から県道川本波多線に分岐し、志学の集落の中にある交差点を左(西)方向に曲がって坂を登ると、“鶴の湯”があります(交差点を右に曲がった先には“亀の湯”があるらしい)。建物の左手に未舗装の空き地がありますから、数台であれば自動車を駐めることができます。ってか、わたしは乗ってきたバイクをその空き地に駐めました。

施設全景

 建物の入口左横に無料で利用できる手湯が流れているのですが、これがまず凄い。

手湯

 温泉の含まれる成分が析出した湯ノ花で周囲が真っ赤です。この赤いのは赤土でも赤錆でもなく、全部が湯ノ花です。ぱっと見は透明に見えますが、これだけで泉質が想像できようというもの。

析出物の堆積も酷いが、竹と木とでできた温泉吐出口のへたれ具合も酷い(苦笑)

料金

 利用料金は大人一人 400 円( 2026 年 5 月現在)なのですが、その支払いシステムが驚異的でして……。

 まず建物に入ると、入口のすぐ横に驚いたことに入浴券の券売機が設置されています。え? このくたびれた見た目の建物に券売機があるの?

ハイテクメカ

 しかし、券売機の反対側にある受付は無人。……何だ? この受付台の上に置かれた箱は?

入浴券はこの箱の中に入れてください。

 まさかの無人受付システムwww 日本の治安の良さを信用し過ぎだろwww 昭和かよ。そもそも「入浴可能かどうか」の判断基準が“入口にのれんが掛かっているかどうか”なのだそうで、色々と牧歌的過ぎます。

浴槽

建物内にあるのはロビーと男女の大浴場、トイレ、休憩用の座敷だけ。体重計までいかにもな秤型

 浴槽は内風呂のみです。というか、本当に浴槽が一つあるきりです。身体を洗うための洗い場すらありません。一応、プラスチック製の風呂桶やお風呂椅子は置かれているものの、壁面にお湯や水が出る蛇口がないので、どうすることもできません。当然、シャンプーやボディソープは愚か、固形石けんすら備えられていません。

 とは言え、せめて浴槽に浸かるまでにざっとお湯をかけて身体を洗い流したいじゃないですか。それじゃあどうするかというと、お湯が出る設備が壁面に設けられてはいるのです。でもさっき、「蛇口がない」って書きましたよね? では壁面にあるのは何かと言えば、ぶっとい配管用の塩ビパイプ。ふつうなら壁や床に埋め込まれているはずの配管パイプが壁からドーン! と生えていて、そこからジャブジャブと温泉のお湯が流れ出しているのです。そのお湯を床に置かれたかめが受けていて……。待て! これは焼物の瓶じゃない。プラスチック製の漬け物桶じゃねえか! 内側も外側も赤茶けた析出物で覆われていて、見た目はどう見ても焼物にしか見えないけれど、重量が軽過ぎる!

 あまりに見た目詐欺な漬け物桶から風呂桶でお湯を汲んで身体を流し、いよいよ浴槽へ身体を沈めるわけですが、当然あれだけえげつない湯ノ花を析出させる温泉水で満たされた浴槽がふつうなわけがありません。浴槽を覗き込むと様子が見えるのは水面からおよそ 10cm ほど。そこから先はやや赤茶けた乳白色のもやに覆い隠されていて、その先は全く見通せません。しかたがないので、おのれの感覚を信じつつそっと足先をお湯の中に差し入れて……。あ、足先が床面に着いたな。それじゃ、反対の足を……。危ねえ! 浴槽の床に段差があって、危なくすっ転げそうになりました。……この温泉、危険過ぎる。

 しかし、様子が分かってお湯に肩まで浸かると気持ちよさはハンパありません。湯ノ花がこれだけ凄いと、お肌もつるつるになりそうです。源泉を若干加温しているそうですが、それでもややぬるめのお湯をたっぷりと堪能しました。

他設備

 お風呂上がりに休憩するための場所はあります。お座敷が一間あるだけですが。

昭和の十畳間

 何このお婆ちゃん感!

遺物過ぎる物体

 チャンネルダイヤルをガチャガチャ回すタイプのブラウン管テレビ(脚付き)なんて 40 年ぶりくらいに見たわ! (さすがに VHF のアンテナ線は接続されていませんでした) そして……。

17 年前のアニメグッズ

 なんで座卓の上にテレビアニメ“けいおん!”の田井中律が描かれた団扇が置いてあんだよ!?

 ちなみに、施設内には食堂は愚か、飲料の自動販売すらありません。建物を出てすぐのところに自動販売機が一台設置されているので、青空の下で冷たい飲料をぐっとるストロングスタイルが求められます。

あってよかった自動販売機。当然、近場にコンビニがあったりはしません。

志学薬師

 因みに、施設の名前に“志学薬師”とありますが、これは建物のすぐ裏手に薬師堂があることに由縁するようです。

立て看板

 建物の正面左手に藤棚が設けられていて、その先に進むと薬師堂があります。

ちょうど藤の花が咲いていました

 どうせならと、入浴のついでにお参りもしてきました。

清掃が行き届いたお堂

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