今回ご紹介するのは岡山県真庭市湯原にある真賀温泉館です。
岡山県の北部にある真庭市の中心市街地よりやや北寄りにある湯原地域は“湯原温泉郷”と呼ばれています。なぜ単なる温泉ではなく、温泉郷なのかというと、温泉の源泉が一つだけでなく、地域のあちこちから複数の温泉が湧き出しているからです。湯原温泉郷の中心はその名の通り、湯原温泉というのですが、その周囲にいくつも、まるで衛星のごとく複数の温泉地が散在しているのです。今回ご紹介する真賀温泉はそのサテライト温泉の一つです。
谷間の秘湯
山陰地方と中国縦貫自動車道とを結ぶ支線高速道路である米子自動車道の湯原 IC を下りて国道 313 号線を南(インターを出たところの突き当たりの信号を左)に向かいます。国道 313 号線は岡山県内でも有数の主要河川、旭川沿いに伸びており、その川筋は中国山地の山の間を縫うように続いています(この辺りはまだ源流域ですから、小川に毛が生えた程度の清流です)。当然、その川筋に沿う国道も山と山の間の谷底を走ることになります。川と道の両側はすぐに山になっており、鬱蒼とした森に覆われています。国道沿いに数キロメートル進むと、道の右手すぐに真賀温泉があります。

国道沿いには自動車を 8 台ばかり駐められる駐車場があるきりで、建物は山肌にへばり付くように上方向へと続いています。

実際には国道の左手、旭川の河原に下りたところにも広い駐車場がありますから、車をどこに駐めるか悩むようなら、とっととこちらの駐車するのが吉です。っていうか、わたしもそうしました(苦笑)

で、車を駐めたら、階段をムリムリ上って、上にある温泉施設へ向かいます。


ふと視線を逸らすと、すぐそばの側溝を温泉が流れていたりします。
で、たどり着いた温泉施設の建物がこちら。

見るからに、「山肌に露出した岩の間から源泉が湧いていたから、その上に無理矢理建てた」感が溢れる建物です。建物に入って靴を脱ぎ、 100 円玉でロックするタイプの下足箱に靴をしまうと、昭和な見た目に反して券売機が設置されています。そこで入浴券を購入してすぐ近くに居るおばちゃんに渡し、男/女/混浴(幕湯)に分かれた浴場に進むというシステムです(貸し切りの家族風呂もあるようです)。

入浴料金
ちなみに、入浴料金は男女別の普通湯がひとり 250 円、男女混浴の幕湯が 400 円です( 2025 年 6 月現在)。今回、わたしは男性用の普通湯に浸かりました。
浴槽
浴槽は内湯が一つあるきりです。定員は基本 6 名ということになっているようですが、一度に 10 人が入ったら、浴槽から人が溢れる大きさです。お湯は掛け流し——というか、浴槽の床面になっている岩の隙間に節を抜いた竹の棒がズドン!とぶっ刺してあって、そこからこんこんと湯が湧いています。掛け流しも何も、この浴槽そのものに直接源泉が湧いているのです。浴槽から溢れた分のお湯はそのままオーバーフローさせています。給湯システムとしては超原始的。
泉質はかなりアルカリ性が強いそうで、湯に浸かっていると皮膚表面の角質層が浸潤されてきて、ヌルヌルします。古い角質層が溶け落ちて、お肌がつるつるすべすべになるってわけですね。
浴室にはシャワーなんてこじゃれたものはなく、壁に水道の蛇口が一つ付いているきりです。もちろん備え付けのシャンプーやボディソープもナシ。お風呂椅子と手桶が二つ三つ置いてあるだけなので、「必要なものがあったら自分で持ってこい!」スタイルです。
他設備
そんな、恐らくは岩の隙間をコンクリで固めている以外はここ数百年変わらないスタイルで運営されている温泉なので、アメニティは必要最低限以下です。入浴後に座って休むベンチが建物の内外に数脚設置されているくらい。入浴後なら冷たいドリンクで喉を潤したいところですが、入浴施設内に飲料の自動販売機は設置されていません。階段を下りて国道横の駐車場まで戻ってくれば、公衆トイレの横にコカコーラ、サントリー、キリンの国内三大飲料メーカーの自動販売機がそれぞれ設置されていますから、そこまで移動する必要があります。

余談
ちなみに、こういった温泉施設の場合、入り口やロビー、脱衣場などに「刺青、タトゥーのある方は利用をご遠慮ください」的な掲示がなされていることが多いと思います。しかし、湯原温泉郷の温泉施設では、その種の掲示を目にすることはまずありません。なぜなら——わたしが入浴している最中、両肩から背中にかけてそれはそれは立派な刺青を背負ったヒゲのお兄さんがずいっと入ってきて、わたしの斜め向かいで肩までお湯に浸かって、「ふいーっ」とか言ってたからです。様子からして、どう見ても常連客。そら実物がしょっちゅうやって来ているなら、一々「帰れ!」とはなかなか言えませんわなあ。わたしも、「お兄さん、背中のその柄は歌舞伎役者か何かですか?」とかフレンドリーに語りかける勇気、なかったもんなあ(遠い目)
コメント